大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)3928号 決定

本籍並住居

群馬県碓氷郡秋間村大字東上秋間二七五七番地

田島正一

大正三年一一月四日生

右に対する名誉毀損被告事件について、昭和二八年六月二九日東京高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人丸山勇之助の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決の是認した第一審判決が適法に確定したところは、判示家屋北側道路の通行人にも容易に聴取れる状況の下における判示場所で、「盗人野郎、詐欺野郎、馬鹿野郎」と連呼し、次で、「手前の祖父は詐欺して懲役に行つたではないか」との事実を摘示して呶鳴つたというのであるから、公然、すなわち、不特定、多数の者の見聞し得る状態において、右連呼と祖父に関する事実と相俟つて石井賢太郎自身の社会的評価を受くべき具体的な事項(すなわち性行)を摘示したものというべく、従つて、原判決には所論の法令違反は認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例